「そこでなにしてんの総悟君?」 「 あーいいからいいから、気にせずゆっくり寝とけィ」 「あ、はいわかりました、、って気にするわボケエエ」 女のくせに涎垂らして爆睡なんてだらしない。毎日無駄に動き回ってるから一回船漕いだらなかなか戻ってこないことは多分、ここじゃ知らない奴のほうが少ない。 今日は非番だから別に構わないんだけど、入り口叩いても反応ないから開けてみたらそういう状態で、いつだって眠らない悪戯心が顔出しちゃって寝てるとこ失礼して組み敷いてみた。 改めて近くでよく見てみると、面は良いのにって他の隊士たちがよく話しているのを思い出した。 まあ確かに黙ってじっとしてれば。ただそれ以外抱えてる問題点が大きすぎて、人間としてはそこまで悪くないのかもしれないけど女としての総合評価は限りなくゼロに近い、いや等しい。 オレからしたら普通の女なんてつまんないだけだから別にいいんじゃないって思うけど。 代謝いいから汗かいて寝苦しそうに、混じってらしくない花の匂いがしてくすぐったくなって、隙だらけの腕掴んで力込めると身じろぎして、開けた時のひん剥いたまん丸の目玉が思い出すと笑える。 「なんなの発情期?」 「あいつらと一緒にしないでくんね?」 あいつらって勿論近藤さんとか土方さんとかついでに山アとか、下半身が本体みたいな残念な人達のこと。 「ちょっと暑いから放してほしいんですけど」 「別に減るもんじゃねーだろィ」 「はあ?なにそれ」 「土方さんといつもやってんじゃねーの」 「んなわけあるか気色悪い!」 気色悪いだって可哀想に、すかした黒髪思い出して心の中で合掌した。別に可哀想とか一切思ってないけど。 知ってたけど随分大事に扱われてるらしい、くすぶって持て余してるのバレバレなくせして衝動閉じ込めて、知らん振りして待ってれば通り過ぎるとでも思ってるのか。 そんな簡単なもんじゃないくせに、自覚してんだかしてないんだか、ぎりぎりのところで踏み止まってる堅物の脳天に蹴りでも入れてやりたい気持ちになった。 「いいか、おめーがいつまでもオレに勝てねーのは生娘だからだ。だから手助けしてやろーとしてんだ、感謝しな」 「絶対関係ないし余計なお世話だし」 押し返す力が強まったのは生娘ってとこじゃなくて勝てないってところ、いつだって鼻につく負けず嫌いっぷりはこんな時でも健在のよう。 少しくらい女らしく声上げるなり頬染めるなりはだけてる胸元、気にするなりしてくれたら面白いのに、普通に腕力で押し返して来るからある意味想像通りでつまんない。 床に押さえつけられてる腕を何が何でも解こうと完全にマウントポジションなのに本気で力込めてくるから、そうなるとこっちも負けたくなくて一層、半分わざと、力が入る。 「いだだ!離せつってんでしょーが!」 「いいから黙ってオレに抱かれろとけ。可愛がってやるぜィ」 「ふ、っざけんな、、!」 「だから力じゃ敵わねーっ、て、」 ごつん、星が散って頭蓋と中身ともに渾身の一撃を食らったおかげで数秒間ぐわんぐわんと揺れていた。 意外と首長いのね、行動自体予想してなかったわけじゃないけどリーチと石頭は予想外。 「いってーなコノヤロー!冗談通じねーのかオメーは!」 「質が悪いし度が過ぎるんだよバカヤロー!」 多分結構痛かったらしい、額のあたり押さえながら続けて蹴り入れて来るけどその前にはだけてる方直せばいいのに。 「なー本気でヤられそうになったらどうすんの?」 「叩き斬るに決まってる」 「うわーコエー女」 「ていうか何しにきたの?今日休みなんだけど」 「食堂早めに閉めるっつーからわざわざ呼びにきてやったんでィ」 「えっまじで?」 早く言ってよ、いそいそと布団たたみ出してさっきまでの出来事がもうなかったことみたいになってるからさすが。 おまけに普通に着替えようとするなんてもう、残念すぎて見てらんなくて、先に行ってる事にして部屋を出た。 ちらりと見えた、薄いけど確かにある女の証は、本人からしたらきっと邪魔なものでしかないんだろう。周りからしたら下世話な事は言いつつも簡単に割り切れるものじゃないのに自覚してないから、警戒心がないどころか抱く対象にすらなってない、なんとも面白くないと、思ったのは多分、オレだけじゃない。 「気色悪いってさァ」 「・・うるせーよ」 柱の影に凭れかかる黒髪の、おそらく今も仏頂面を見ないで声かける。いつもはうざいくらい漂ってる煙の匂いが今はしてなくて、依存しすぎて身体の中真っ黒なくせして喫むのも我慢してスタンバイなんてずいぶんご執心だこと。 「アンタずっといたんでしょう?覗きなんて野暮な事するたァらしくねーな」 「別にそういうんじゃねーよ。おめーが下手なことしねーか見張ってただけだ」 保護者だ保護者。便利な単語出せばなんとかなるって思ってるのか、さっきの言葉で明らかに影しょっといてばかみたい。 ざまーみろって心の中で舌出してついでに揺さぶりをかける。 「ねーあいつ胸のココんとこほくろあるって知ってました?」 これくらいのやつ、ぎりぎりのとこ指して言った瞬間青筋浮かんでるのが見えて、またひとつスイッチ見つけたことにちょっとだけ嬉しくなった。 「おい、、テメエなにして」 「土方さんさァまだ手ェ出してないんですね」 「するわけねーだろ。おめーと一緒にすんな」 「まーオレと違って正攻法でいくの悪くねーと思いますけど、早めに保護者ぶんのやめたほうがいいですぜィ」 「あ?どういう事だよ」 オレとこの人じゃ元来の意味合いが全然違うけど、あえてそう思わせる言い方をしてしまうのはわりと最近くせになってる。全くの誤解ってわけでもないしそう解釈してくれた方がこちらとしては面白いから、別にいい。 「オレらそーゆー目で見られてねーみてーだから、対象外どころか圏外になっちまいますぜ」 青くなって赤くなってまた青くなった。色と温度の変化が、内側を揺さぶるのはこういう人間のほうがわかりやすくてやりがいがある。 警戒しかしてないこの人と警戒心すら持たないあいつが相容れる可能性って一体どのくらい、色々と自覚してないところは同じだからうまく転がればあるいは。どうなろうが知ったこっちゃないけど。 ただあいつがどこまで女の部分寝かしたままでいられるか、試してみたい気持ちはある。 本当に無理矢理組み敷いてでもみたらどんな顔するんだろ、またなかったことにでもされるんだろうか。 その前に大事なとこ切られちゃ困るからそれはそのうち。今はやめとく。 寝たままのジャーク  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (140805) |